■TCKとは
TCKとは、サードカルチャーキッズの略で「両親の生まれた国の文化を第一文化、現在生活している国の文化を第二文化とし、この二つの文化の狭間で、そのどちらの文化にも属することなく、独自の生活文化を創造していく子どもたち」のことを指します。駐在員や外交官、国際機関の職員の子ども、そして宣教師子弟などが当てはまります。宣教師の子弟は以前はMK(ミッショナリー・キッズ)と呼ばれていましたが、今はTCKとも呼ばれるようになりました。

■宣教地での子育て
宣教地で子育てをする宣教師家族にとって、子どもの教育(学校)をどうするかは大きな課題です。インターナショナルスクール、現地校、ホームスクーリングなど、宣教地の状況によりさまざまです。親にとっても新しい地で言語を学び、生活に慣れていくのは容易ではありませんが、子どもたちにとっても大変な変化です。子どもたちが現地の生活に慣れ、友達ができ、安心して学べる環境が整って初めて、親も働きに集中できるようになります。
私たちがカンボジアでの働きを終える頃、忘れられない会話がありました。私たちの後任に来てくださったインドネシア人のご家族には二人の幼いお子さんがおられ、「言葉の学びや奉仕と家庭生活を両立させるのは大変だと思います」と私が言うと、「私たちはそれらを別々のものとは思っていません。ひとつだと考えています」と答えられました。子どもたちとの家庭生活、生き様そのものが宣教なのだ、とはっと気づかされた瞬間でした。
■OMFでの取り組み
OMFではフィールド(宣教地)、ホーム(派遣国)双方にTCKアドバイザーという役職があり、宣教師ファミリーのサポートに当たります。例えば、新しく派遣される宣教師家族の子どもたちが、宣教地の生活、学校にうまく適応できるよう助けをしたり、教育の選択について親御さんの相談にのったり、助けになる本やリソースを紹介したりします。日本フィールドでは、リトル師という方が23年の長きにわたって、このようなTCKケアの働きをしてくださいました。

私たちは2008年に日本に帰国し、ホームサイドの働きを始めましたが、私は日本ホームサイドのTCKアドバイザーの働きを担うようになりました。初めて参加したTCKアドバイザーの国際会議では多くのことを教えられました。「複数の言語の中で育つからこそ、母語をしっかり修得することが大切」「学習の基本は読書、幼い時に幅広い分野の本に触れさせること」「高等教育を何語でするか、から逆算して宣教地での教育を考える」「移動の際、思い出を形にして残すのは助けになる」「10代の子どもは極力移動させるな」など。同時に、宣教地でTCKとして育つ我が子の状況についてどれほど自分が無知であったかに気づかされる時でもありました。
■ドリアン会
2009年から続いているメンバーケアミーティングという超教派の学び会では、これまで宣教師のケアに関わるさまざまな課題について取り上げてきました。その中で特に要望が多いのはTCKケアです。欧米に比べ、宣教師派遣国としての歴史の浅い日本は、この分野の蓄積されてきた経験、学びのリソースが圧倒的に少ないです。日本人TCKケアの大きな必要を感じる中で、私は成人した日本人TCKを発掘したいと思いました。日本人宣教師として草分けの先生方の子弟の中で、コンタクトのある数人の方々に声をかけてオンラインミーティングを計画しました。応じてくださった皆さんは、互いに初めて会う方々です。そのうちの一人が「それぞれどんな国でどんな学校に行ったか、自分の歩みを紹介する証しを事前に共有してからお会いするのはどうでしょう」と提案してくださり、各人、自分の歩みをまとめたものを私に送ってくださいました。私はそれらの証しを読んで、正直心配になりました。一人ひとりのライフストーリーがあまりにも複雑で、パンドラの箱を開けてしまうのではないか、そんな恐れを覚えたのでした。

ドキドキしながら臨んだ1回目のオンラインミーティング、それぞれ自己紹介を始めると、皆さん、お互いに質問し合い、たちまち心開かれた深い分かち合いがなされました。何人もの方が、自分と同じような境遇の日本人MK(この世代にはこちらの呼び名がなじみ深い)と出会ったことはほとんどなかった、こんな分かち合いをしたのは初めて、と言われたことが印象的でした。この集い、皆さんが育った東南アジアの代表的果物にちなんでドリアン会と名付けられました。
TCKケアという概念もほとんどなかった時代、主からの召しを受けて全力で宣教に励んだ親たちの姿を見て育った一人ひとり。国や文化を越えて移動するたびに経験する喪失感、必死に周りに合わせ自分の居場所を見つけようとあがいた葛藤、自分がどこに属しているのかわからない不安定感…。彼らはTCKとしての苦労とともに、多様な文化で生活した柔軟性やたくましさ、さまざまな国籍の神の民の交わりの中で体験した天国のリアリティー、それら凸凹で色とりどりな経験を通して練られた部分を持っておられます。2021年10月からほぼ毎月集まっているドリアン会、20代の若手メンバーも少しずつ(時々)加えられています。今後、主がどのように導いてくださるかわかりませんが、埋もれてしまっている多くの日本人TCK、そして現役TCKの祝福につながることを祈りつつ、集まりは続いています。
【お祈りください】
■宣教師の子どもたちが、父なる神様と親しい関係の中に自分のアイデンティティーと価値を見出し、主に従って歩めますように。
■宣教師の親がTCKとして育つ子どもへの理解を深め、神様からの愛と知恵をもって養い育てることができますように。ふさわしい教育計画を立てることができますように。
■TCKの支援をしている人たちに神様からの助け、導きがありますように。



