宣教師になるまでの過程 佐味湖幸(OMF日本ホームサイドセンター総主事)

「どういう人が宣教師になるのですか?」、「宣教師になるためにはどういう資格や訓練が必要ですか?」、「OMFに入るにはどうしたらいいのですか?」などの質問をいただくことがあります。そこで、今回の特集では宣教師になるまでの過程についてお分ちしたいと思います。

宣教師の召しと資質
ここでは宣教師とは「神様から異文化宣教への召しを受け、教会から祈りと支援を受けて送り出され、福音宣教のために働く人」と定義したいと思います。そこでまず、神様からの異文化宣教への召しについて考える必要があります。召しはその人の主観的な思いや、一時的な熱心によるものであってはいけません。神様からの召しを確認するには、①みことばによる確認、②内なる聖霊による確信、③教会による確認が必要です。召しを確認する時には、牧師や信頼のおける信仰の友などからアドバイスを受けて祈ってもらうことをお勧めします。そして、確信が与えられるまで忍耐をもって祈り、待ち望むことが大切だと思います。
宣教師となる人に求められる資質としては、謙遜さ、柔軟性、協調性、コミュニケーション能力、そしてユーモアなどがあるでしょう。完全な人を求めているわけではありません。主からの召しをしっかりと受けとめ、主に従う覚悟と謙遜に学ぶ姿勢をもっているならば、主が相応しく整えてくださり、必要な資質や能力を賜物として与えてくださると信じます。

宣教師になるための備え
まず信仰者として、日々の歩みの中でみことばの学びと祈りによる神様との親しい交わりをもっているか、教会に仕えているか、証しの生活がなされているかをチェックする必要があるでしょう。献身者として、神学校での神学教育や共同生活を通して訓練を受けることもとても有用です。

それらに加え、異文化宣教に出ていく人には英語の学びと異文化の中での生活は大切な準備となります。英語の学びについてですが、遣わされていく宣教地は必ずしも英語が話されているところではないかもしれません。しかし多くの場合、宣教師は多国籍からなる宣教師たちとの交わりやチームワークの中で働きます。そこで、共通語はどうしても英語になります。また、英語の習得によって外国語を学ぶ脳を訓練すると、他の言語を習得するのが速くなると言われています。また、英語の文化圏では自分の考えをはっきりと言葉にすることが求められますので、空気を読むなど言語外のところで意思疎通をする日本人には、言うべきことを言語化する力も英語を通して身につけることができます。

異文化経験に関しては、宣教師になる前に短期宣教に参加すること、海外の英語学校や神学校で学ぶ機会をもつことを強くお勧めします。自分のコンフォートゾーン(自分にとって快適で安全な空間)を出たところで、ある程度の期間(できれば1年以上)生活するという経験は、しばしば自分の弱さと向き合い、神様との関係、また家族(特に親)との関係を見直すよい機会となり、霊的な備えの時となります。また、異文化の中で、文化、価値観や世界観の多様性に気がつくことは、宣教地で福音の文脈化(現地の文化の中での福音理解と福音の適応)に取り組む上で助けになるでしょう。

収穫は多いが、働き手が少ない。だから、収穫の主に、ご自分の収穫のために働き手を送ってくださるように祈りなさい。マタイ9:37,38

収穫は多いが、働き手が少ない。だから、収穫の主に、ご自分の収穫のために働き手を送ってくださるように祈りなさい。マタイ9:37,38

最近では福音宣教のあり方や方策は多様化しています。また「宣教師」という身分では入っていけない国や地域が多くなっていますので、何かの資格や就業経験をもっていることは大いに役立つことがあります。しかし、そのような場合、宣教の隠れ蓑として肩書きだけのものにならないように注意しなければなりません。相手の国が求めるレベルの高いものを提供できる必要があります。

OMFの働き人となるには
OMFでは宣教師志願者が与えられた場合、以下の4つの面から審査をし、志願者はそれぞれのクリアランス(承認)をもらう必要があります。
①ホーム・クリアランス:志願書(英語)や推薦書の書類をもとに面談をし、召し、資質、訓練などを確認し、OMFの使命、ビジョン、価値基準と信仰告白に同意できるか、派遣教会や支援会などが整っているかなどを審査します。ご夫妻で志願される時は、夫婦別々に書類を提出していただき審査します。
②フィールド・ウエルカム:候補者の希望する働きとスキルや資格が宣教地の必要と合っているかを審査します。例えば、いくら医療宣教師として働きたいと願い、優秀な医者であっても、現地でその必要がなければ、その人は医療宣教師としては受け入れられません。
③メディカル・クリアランス:身体的、精神的な健康状態を専門家に診断していただいて、適性を確認します。お子さんがいる場合は、お子さんも含めて家族全員の健康をチェックします。
④ファイナンシャル・クリアランス:経済的支援が十分にあるかを判断します。このためには、支援会や派遣教会の協力体制がどこまであるかが一つの鍵となるでしょう。

これら4つのクリアランスが揃うまでには、少なからず時間がかかります。神学校を卒業し、英語ができて、健康で、派遣教会の体制が整っている人でも少なくとも1年くらいはかかります。また、これから神学校に行くとか英語を学ぶなど準備が必要な人ならば、数年かかりますし、新婚の方や初めての子供が与えられた方々などは、少なくとも1年くらいは母国で過ごすことが求められます。ちなみに私の場合、大学卒業後2年目に宣教師への召しがはっきりとして、それからイギリスで英語の学び、神学校での訓練、帰国して母教会での訓練を経て、OMFに志願し、OMFに入るまでに6年かかりました。

ある程度この審査過程が進むと、候補者コースに参加していただきます。これは宣教師候補者とOMFが互いのことをより深く知り合うためです。

こうして、4つのクリアランスが揃いましたら、OMF国際センターでもたれる新人宣教師のオリエンテーションコース(3週間)に参加していただき、その後各宣教地へと遣わされていくことになります。

このように長い準備期間を通って現地に着いても、すぐに働きだせるわけではありません。現地でのオリエンテーションや言語と文化の学びの期間(1〜2年のフルタイム)を経てやっと何らかの働きが始まります。そして実は現地での言葉や文化の学び、宣教師としての訓練はずっと続いていくのです。その辺のことは、またの機会に。

「神は偉大な信仰の持ち主を求めているのではありません。神に従う覚悟のある人を求めているのです。」ハドソン・テーラー

【祈りのリクエスト】
・ 新しく宣教師になる人が起こされるように。
・ 主から宣教師になるように召しを受けている人たちが相応しく訓練され、整えられるように。
・ 神様の世界宣教へのチャレンジに対して、日本の教会がさらに応答していけるように。

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